PS5『野狗子: Slitterhead』クリアー後感想 ※ネタバレ控えめ 怖いのはディレクターの才能

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「SIREN」「グラビティデイズ」を手がけた外山圭一郎さんがクリエイティブディレクターをつとめたアクションアドベンチャー。
・・・そう。
ジャンルには”ホラー”の3文字がないのです。

本作には「SIREN」のようなホラーゲーム、怖さを期待していましたがその期待は良い方向に裏切られ近接バトルや散策が面白いアクション濃い目のゲームに。
ただ悪い方向にも裏切られ、怖さの面でいうと怖さを感じる場面はかなり少なめ。

ただファミ通最新号のインタビューで外山氏は
「本作ではプレイヤーを怖がらせようとは全く思っていない」
「ですが一般的には描かれない世界の裏側を垣間見るような感覚を味わえる作品として本作はある意味ホラーだと思っている」
と、怖さが控えめな部分は狙い通りなのでしょう。
後者で語られているように霊的な何か、鮮血にまみれるバトル、人の暗部が蠢く九龍と裏社会の描写はジリジリとプレイヤーに迫るモノはあります。
本作に「SIREN」らしいホラーゲームそのものを求めるとかなりガッカリするかもしれませんがアクションゲームとして面白く遊べます。

操作にクセのあった外山作品ですが本作は操作性がかなりよくシンプル操作で剣戟やパリィが、散策ではワイヤーアクションのような飛び回るアクションが楽しめます。
なにより「憑依」を主体としたオリジナリティの高いアクションは新しいのにわかりやすい、単純なのに面白くて熱い。

【アクション】
「憑依」このアクションがこのゲームをオリジナリティに溢れさせバトルと散策を新鮮なものにしています。
SIREN2に似たようなシステムはありましたが別物。

プレイヤーは自分の血を武器にして攻撃。
攻撃アクションの種類は少なめですが敵の攻撃が激しくその攻撃をパリィ、回避してからの攻撃が主体になります。
パリィはやりかたは簡単で防御中に表示されたマークの方向に右スティックを倒すだけ。
やりかたは簡単ですがタイミングは少々シビア。
パリィに成功しつづけると自分だけ時間がゆっくり流れる攻撃の大チャンス状態に。
回避は回転しながらの回避でこれも簡単。
敵がひるみにくく攻撃頻度が高めなのでパリィ主体の受け身になりながらのバトルになり気味。
もうちょっと”攻めのアクション”システムが使いやすければよかったかな。


そして「憑依」
バトル中、プレイヤーと敵の周辺には一般人がウロウロしています。
それだと言い方が悪いので「一般人がいるところでバトルが始まる」、と言い変えます。
プレイヤーはその一般人に自分の魂(のようなもの)を飛ばして乗り移りその一般人を操作キャラにすることができます。

「憑依」した間際はステータスがあがったり不意打ちができたりもします。
この「憑依」にはリキャストタイムもなければ特別なゲージも必要なく「憑依」を次々に行いながらボスを削るバトルは今までにない新鮮味があります。

プレイヤーのキャラによってはその一般人をけしかけたりバクダンに変えることも可能。
一般人に憑依→バクダンになり敵に特攻→爆発する前に他のキャラに憑依→バクダンになったキャラは爆発
といったハンターハンターで団長がVSヒソカ戦で使ったようなトリッキーな戦いもできます。

プレイヤーの体力の回復は敵を攻撃したときにできる血溜まり、敵に攻撃されたときにできる血溜まりを吸収することで回復というわかりやすさも良い。
ただし敵は積極的にプレイヤーが憑依しているキャラを狙ってくるので回復をするのは難しめ。
前に憑依していたキャラに敵が引き寄せられる時間がもうすこし長ければ・・・。

カメラ・視点はあまりよろしくないです。

壁際に追い詰められたときは自分の状況がまったくわからなくなることも。

散策ではプレイヤーは高所にジャンプできるワイヤーアクションのような能力をつかいジャンプを繰り返し建物の屋上にいくことも可能。
SIRENのように敵の視点をジャックして居場所を探る要素もあります。
遠くの建物や金網の向こうにいる一般人に次から次へと憑依し、いけないような場所でもいけてしまう要素はスピード感ある散策・探索ができます。
この言い方は失礼なのですが外山作品とは思えない程、簡単操作でストレスやクセのないアクションシステムです。

【キャラクター】
本作にはメインとなるキャラが複数登場。
それぞれにストーリーがあり、アクションにも違いがあります。
キャラごとのストーリーは別々になっていて日付や時系列によってわかれて表示されているSIREN方式。
今どこで何が起こって誰が何をしているのかが表になっているのですがそれがわかりやすいようでわかりにくい。
タイプリープの要素もあるので展開としてはやや複雑でぶつ切りなストーリーが進行している感じにもなります。
基本的に一本道なので進行に迷うことはないのですがSIREN同様、話がどこを進んでいるのかはややわかりにくいです。
その不安感は開発者の狙っている所なのかもしれませんが。

メインキャラクターには育成要素もあり。
ゲームを始めて直後は一般人にも攻撃が当たったり(フレンドリーファイア?)プレイヤーの貧弱さに「このゲーム、ダメなのでは?」と不安がよぎりましたがフレンドリーファイアや
プレイヤーの弱さを育成でカバーできるようになりはじめると俄然ゲーム全体が面白くなってきます。
それでも敵の強さはプレイヤーのそれを凌駕。
プレイヤーの育成の上限はすぐ達することができ、強い敵への対処はプレイヤーのスキルアップが重要になってきます。
そんなときにカメラ視点の悪さなどで受ける攻撃には結構イライラさせられます。

ゲームに登場するキャラは全体的に頭でっかちなアンバランスな作り。
メインキャラクターの造詣はよくできているのですがモブキャラクターはモブ相応のイマイチさ。
例えるなら龍が如くの街中を歩く一般人くらいのクオリティ。
モブならそれでいいのでは?というとそういうわけにはいかないのです。
本作はそのモブのキャラに憑依して操作できるようになるゲーム。
街中のおばちゃん、おじちゃん、ブサイクなイケてないモブもプレイヤーキャラになるのです。
モブ全員もちゃんとした造りにするのはかなり無理難題ですし、住民みんなが容姿端麗な人ばかりの街もないのでモブのクオリティの低さを本作の欠点にするつもりは更々ありません。
ステージをクリアするとその時に操作していたキャラがアップになるのでクリア時モブキャラがアップになることも。
そのヘンテコな描写も本作の魅力の1つなのでしょう。
街中の冴えないモブの老若男女を操ってボスを倒す、いいじゃあないですか!

【ビジュアル・BGM】
久しくゲームを出されていなかった外山氏。
正直、今のゲームに求められているクオリティの制作状況からは置いてけぼりになっているのではと心配しましたがその心配はまったくの無用でした。
トップクラスとは言えませんが街並みや小物に至るまで細かい描きこみや作り込みに関心しました。
SIEにいたころよりクリエーターとしてスキルアップされているのでは?
インディータイトルとは思えない程のビジュアル、ボリュームにも驚かされました。
音楽はサイレントヒルシリーズも手がけた山岡晃氏。
本作の音楽は数すくないホラーっぽさを際立たせる楽曲もあればメタル系の音楽も。
その激しい楽曲のほうが本作にあっているんですよねぇ。
本作に熱さや激しさを求めて買ったわけではないのにアクションだけでなくカッコよさや楽曲にも熱くなれる、これは嬉しい誤算。

いろいろと誉めすぎたかな?(笑)
オリジナリティはあっても素晴らしくよくできていると呼ばれるアクションゲーム、にはあとちょっと達していない惜しさが。
バトルや散策に大きな変化がない、敵の種類の少なさ、目的地や進行フラグのわかりにくさ、突飛なストーリーなど困った箇所は随所にありますがそれらをカバーできる面白さも随所にあるんです。

でもね・・・やっぱり”怖さ”をもっと味わいたかった!

外山さんに「怖がらせる気がない」のでそれは間違った注文だとも言えるのですが。
私がホラーゲームに慣れてきたせいもあるのでしょうがここまで怖くないゲームだとは思わなかった(笑)

本作は「SIREN」でもなければ「グラビティデイズ」でもない新しいアクションゲーム。
趣向のまったく違うゲームのそれぞれをきちんとオリジナリティ溢れるゲームに仕上げた外山圭一郎ディレクター。
実は私達が考えている以上にゲームクリエーターとしてとんでもない才能の持ち主なのでは。
次回作も楽しみ!


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