学園ジュブナイルRPGのトップメーカーとも言えるアトラスが王道ファンタジーRPG制作のために立ち上げたスタジオゼロの最新作がついに完成。
失礼な話ですが「気分転換でファンタジーRPG作りたくなったのね」とよくあるファンタジーRPGが作られるくらいにしか考えていませんでした。
しかしそんな現実に近い学園ジュブナイルを作ってきたアトラスだからこそファンタジー(幻想)を真正面から真剣に捉えた意欲作になっています。
ファンタジーRPGを遊び慣れていたゲーマーだけでなくファンタジーRPGを作り続けてきたゲーム開発の方達も本作に驚きを持続したまま最後までプレイできるのではないでしょうか。
【ゲーム全体】
ゲーム進行、バトル等々かなり女神転生、特にペルソナシリーズに似通った箇所が多々あります。
ゲーム内でフラグのある行動をすると時間が経過、期限内に定められた試練をクリアしないとゲームオーバー。
登場メイン・サブキャラクターにそれぞれ役割があり彼らとの交友で好感度をあげると育成やシナリオに影響。
バトルは有効な攻撃で攻撃順や回数に影響がでる、などなど。
それじゃあペルソナの世界観が変わっただけじゃん、と言われれば100%違うとも言い切れません。
アトラスが培ってきたRPGのシステムを上手く昇華させ本作は本作の世界観がしっかりと描かれているので多くの部分で似通っていても呆れることは200%ありませんでした。
アトラスのRPGの良さ、面白さの多くを引き継いでいてさらに完成度が増し、遊びやすくもなっているのですがアトラスのRPGの辛いところまでをも引き継いでいる所も。
行動すると時間が過ぎて期限内に決められたミッションをクリアしなければいけないという点はレベル上げやお金稼ぎなどを自分のペースで行うことはほぼできません。
探索も育成もやることが多くそれらをこなしていくとあっという間に期限の期日に。
そのプレイ中に精神を圧迫してくるプレイスタイルが続きます。
そういったペルソナのゲームシステムが苦手な人には本作も苦手に感じるかも。
ただし、そこはアトラス。
本作もキツキツの日程を組まなくてもなんとかなるゲームバランスになっています。
行き先を間違えて5日くらい無駄に過ごしたり、全ての龍を討伐して廻っても最後は10日くらい余りました。
アーキタイプ制覇はできませんでしたが主人公の王の資質レベルやペルソナでいうところのキャラの「コミュ」は余裕をもって1周目で全員MAXにできました。
私はP4,P5では1周目の初見プレイで全員MAXにはできなかったような。
【バトル】
なんとかなるゲームバランスと書きましたがバトルの難易度は少々高め。
味方や敵の得意or苦手な属性を把握しないとそこらの敵だけでなく中ボス、大ボスではかなり苦戦します。
少々高めの難易度を補うためかバトルの最初からやりなおす機能はアリ。
ただし編成や装備変更はできず、そのためには一度ゲームをリセットするしかありません。
オートセーブ箇所が細かくボス前にはセーブポイントがあるのでそこまで面倒ではないのですが。
弱点を突く攻撃でこちらの攻撃回数が増えたりするのですがそれは敵も一緒。
こちらが空振りやミスをしようものなら攻撃回数が減ってあっという間に敵のターンに。
これもゲーム性の1つなのでしょうがミスのペナルティはペルソナより数倍きつく感じました。
敵に回避され攻撃ミスとかした時はかなりイラっとします。
きちんと味方や敵のステータスを確認しない自分が悪いのですが。
戦闘開始前だけでなく1ターンだけ巻き戻せる機能がほしかったのは正直なところ、でもそうなるとヌルすぎるかな?
ただ戦闘中は死んだキャラを交代できないのはどうなんでしょ?
パーティinキャラは○人いるのですがアーキタイプのシステム上そんなに入れ替える必要もなく○○や○○はほとんど戦闘で使いませんでした。
【ダンジョン・フィールド】
ある程度レベル差があるとそこらを歩く雑魚敵は戦闘エンカウント前に攻撃することで倒せます。
経験値やお金なども入手可能。
これがめちゃくちゃ楽しい。
いい感じで広すぎず狭すぎない、謎解きも難しすぎず簡単すぎない素晴らしすぎる良バランス。
エンカウント前の攻撃に失敗すると先制攻撃されるのですがこれがかなり痛い。
バトルの難易度も相まってほどよい緊張感も味わえます。
ダンジョン内を探索しているとどうしても減ってくるのがMP。
これを回復するには時間を消費して休むか貴重な薬品を使うか地味な作業が必要。
あらゆる行動で時間が消費されるシステムの緊張感はここにも。
【育成】
キャラの育成は敵を倒したときの経験値でのレベルアップやアーキタイプの成長がメイン。
そこにキャラの好感度も絡んでくるペルソナライク。
育成に関わる要素はいくつもあるのですがバラバラのようでちゃんと育成に繋がっていて寄り道しがいもあります。
時間経過と日数制限があるのでのんびりと育成はできないのですがゲーム内で指し示されるやるべきことをその通りやっていけば中ボス、大ボスも倒せるくらいに成長しているバランスです。
戦闘は固定メンバーになりがちですがアーキタイプの育成の幅広さでどのキャラでも活躍できるようになっているシステムは良い、
【シナリオ・世界観】
プレイしはじめるとプレイヤーはいくつかの疑問と憶測に襲われます。
ゲームの主人公らしからぬ主人公の行動や
主人公のもつ本の内容や”ニンゲン”というワード、もしかしてこの世界って・・・と匂わせてくる描写に疑念を持つことも。
それらは後々ハッとさせられるミスリードなのですがそのやり口が巧妙すぎる(笑)
ゲーム業界は”ファンタジー”という言葉に捕らわれすぎて”現代”を疎かにしていたのではないでしょうか。
ナニが、ダレが正しいのかをここまで自然にプレイヤーに考えさせるゲームはなかなか無いです。
ルイの目的とかもう、プレイヤーに極めて近い○○と同じじゃあないの!と。
基本的に誰かさんを倒す、ナニカを護るために戦うよくあるRPGのストーリーなのですがそこを薄めにして民からの視点に重点をおいた進行が新鮮な上にわかりやすいです。
本作のような身分の低い民らの描きかたもあるんだなぁと感心しました。
ペルソナ4、5のような終盤も終盤の怒涛の展開が控えめだったので少々あっさり終わった感じ。
それでも他のRPGに比べれば驚くべき事実も明かされていくのですが。
耳の長い種族はエルフ、小鬼はゴブリンといった通じやすい種族名にしなかったのは過去のインタビューで「定番のレッテルをはられないため」とのこと。
種族間の争いや葛藤も描いている本作ですが種族への先入観無しで遊べたので効果はあったようです。
【キャラクター】
アトラスのRPGのなかで一番好きなパーティinキャラの面子はP4なのですがソレを超えるには至らず。
いろいろペルソナっぽいとは書きましたがペルソナシリーズのキャラと丸かぶりしているキャラはいないような。
いつか本作とペルソナシリーズのキャラが集うゲームを作るときキャラが丸被りしていると困るでしょうし(笑)
マリアとP4の○○くらい?
マリアはその○○みたいな目にあうのかと最後までハラハラした・・・。
メインキャラはそれぞれ重い事情があってもユーモアのある一面も見せ冒険や会話イベントは楽しかったです。
ゲームに慣れてくると気がつきにくくなってくるのですがバトルや探索中にキャラがしゃべる頻度が極々自然で違和感がないのです。
ヒュルケンベルグが一番アレだったりジュナの種族の事情にも驚きが。
DLCでもスピンオフ作品でもいいのでもっと彫り下げてほしい!
【ビジュアル・音楽】
キャラクターや背景などの描きこみや作りこみの細やかさには見惚れました。
探索、イベントや会話シーンも様々なアングルやキャラの動き・ポーズでとにかく凝りまくり。
会話時はキャラのゲーム内モデルとイラストが同時に表示されるのですがゲーム内モデルのほうに目がいってしまうほど。
アトラスらしい凝ったUIも見難そうで実はわかりやすく機能的であっというまに慣れます。
それでもキーコンフィグは欲しかった。
ほとんど使わないL1で支援順位確認、パッドボタンで旅人の声、は何回誤爆したことか・・・。
FF14と並行プレイしていると間違う間違う。
いろいろいろいろペルソナっぽいとは書きましたが一番ペルソナとは違うと感じたのは音楽かな?
幻想的な中世音楽が多くアトラスっぽくないとも感じました。
少々、ありがちな・・・というと言葉が悪いですが印象に残った楽曲は少なかったです。
鎧戦車移動時など印象に残る良曲はあったのですがボスバトルBGMはどれも普通、だったかなぁ。
探索中に敵に絡まれると自然に曲が盛り上がるのはよかったです。
序盤も序盤ですが鎧戦車でガシガシ移動する描写にヤラれました。
これだけで「このゲーム、天下とるな」とその時はそう思ったくらい(言い過ぎ笑)
序盤から大きくプラスで始まったゲームはそれ以降のマイナス面も些細に感じてくるので序盤のインパクトは大事。
学園ジュブナイルRPGで名を馳せるアトラスがファンタジーRPGを作るとどうなるのか。
その期待の遥か上をいく完成度、
その不安を逆手にとった”ファンタジー”という題材の扱いかたには脱帽。
”ファンタジー”を扱うことで”現実”とは何かを考えさせられるシナリオにも驚愕。
ゲーマーはファンタジーが舞台なのにそこにリアルさを求めすぎていたのかも。
きちんとファンタジーの世界をファンタジーに描ききり、よくあるファンタジーRPGのようで新鮮さに溢れるファンタジーRPGです。
期日に追われるのが精神的に辛いだの戦闘のミス時のペナルティがキツいだの書きましたがそこを乗り越える達成感も楽しめるバランスになっています。